第4回21世紀リハ研究会 2000年8月5日


第4回21世紀リハ研究会会場風景

介護・依存から自立へ (1/3)

21世紀リハビリテーション研究会 事務局長 滝沢茂男


はじめに
 今国民は速い流れに足をすくわれそうな状況で、流れの中で佇んでいるように思える。楽しいキャンプが増水で魔のキャンプになった。速い流れに一人又一人と飲み込まれていった神奈川県玄倉川の無残な出来事は記憶に新しい。

 本年五月三十日発表の高齢社会白書に於いて一九九九年十月一日現在六五歳以上の高齢者人口は二千百十九万人で総人口に占める割合は十六。七%と発表された。医療・保健衛生の向上と生活環境の改善は日本人に世界一の長寿をもたらした。人口に占める高齢者の比率は推計を新たにするたびに増加に変更されている。高齢者世帯の所得も貯蓄も充実している。あたかも川辺でキャンプを楽しんでいるかのごとく、健康に楽しく年を重ねている。

 一方、七月二五日で要介護認定を受けた高齢者は二百八十万人と発表された。一九九七年一月の厚生省予測において二〇二五年に介護を必要とする高齢者は五百二十万人(内二百三十万人寝たきり)としたが、この数字も現状のまま推移すれば増加に変更されるのであろう。かつて脳血管疾患は死亡原因の第一であった。現在では一九六〇年代に比較すると半減している。統計から推計すると毎年八万人近くが新たに脳血管障害の後遺症を持つ介護を必要とする高齢者となっていく。これまでなら脳血管障害の後遺症によって徐々に寝たきりになることを意味したのである。

 長寿は健康に楽しく年を重ねるばかりでなく、長寿が許されたがゆえに、要介護から寝たきりになり死に至るまで数年間の無残な苦闘をもたらすのである。大多数の国民にとって、速い流れに足をすくわれ、死に至るのを待つように、順に命の輝きが薄れていく。

 我々は宿命とも思えるこの状態を変えるとして二一世紀リハビリテーション研究会を結成し、研究を重ねてきた。(以下リハビリテーションをリハと表記)

 本年八月五日、日本医科大学第一講堂において三七名の出席者で開催された。介護・依存から自立へと題し、「脳血管障害や下肢骨折を受傷した後でも、高齢障害者が自分で生活できる健康状態と機能を取り戻す」を可能にする為に、昨年の研究会以来実施された研究が報告された。

 冒頭、木島英夫(会長・木島整形外科医院)から「研究会の研究成果で2025年で16%弱と想定される要介護老人の発生を10%以下にするために努力を重ねてきており、今後も努力を重ねよう。」との挨拶と、研究会のこれまでを概説すると共に、参加している研究者全員に対し、その無償の崇高な行為に謝辞があった。
 その後研究発表に移った。


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